堀川中立売西入ル、役人町。
その名の由来は、平安京の禁裏の役人が住んだことにちなみます。この界隈は、都が開かれてからずっと政治の中心と隣り合わせでした。関白・秀吉が聚楽第を築いた頃は大名の邸宅が並びましたし、関ヶ原の合戦後に徳川家康が造営した二条城も目と鼻の先にあります。
本連載の“主人公”は、役人町は中立売黒門南角に建つ、約120歳の町家。2018年夏から改修工事がはじまり、できるだけ原型を保つかたちで、次の50年、100年の命をもつなごうとしています。一軒の町家がその命を守られ、住み継がれるまでの物語をお届けしてまいります。
まずは、この家が生まれた頃のこと、そして前オーナー・田中熙士(ひろし)さん、藤井洋子さんが暮らした頃のことを、お二人に聞かせていただいたお話を交えてお伝えします。