京町家は、「京都らしさ」の代名詞のひとつ。
世界中の人が「美しい」と感じる町並みは、京町家が建ち並ぶエリアにあります。
京町家とは、昭和25(1950)年以前に京都市内で伝統木造構法によって建築された家屋のこと。市内だけでも約4万8000軒(平成20年)が残りますが、毎年約500軒が壊されており、空き家率は約10%にものぼります。とりわけ、「役人町の町家」のような大型町家は、改修および維持に多額の費用が必要となり、保存が難しいとされています。
ところが、前オーナーの田中熙士(ひろし)さんが、売却にあたって出した条件は「元の家の姿を残す形で使ってもらうこと」。生まれ育った思い出の家が壊されていくのは、「胸が裂けるような思いがする」と、更地にして売るという選択肢を退けたのです。
前オーナーの思いは、どのようにして次の世代へと受け継がれていったのでしょうか?