京町家は、「京都らしさ」の代名詞のひとつ。
世界中の人が「美しい」と感じる町並みは、京町家が建ち並ぶエリアにあります。
「京町家はすてきだと思うけど、冬は寒そうだし住むのはちょっと……」。
前回の記事で、「京町家が消えていく理由のひとつは『経済合理性』」だと書きました。もうひとつ、理由を挙げるなら「京町家は住みにくい」と感じる人が多くなっているせいだと思います。カフェ、町家ゲストハウスなど「京町家のレトロさ」は人気ですが、「住まいとしての京町家」はなかなか敷居が高いようです。
でも、ちょっと待ってください。
「寒そう」「不便そう」だけで敬遠されてしまっては、京町家の立つ瀬がありません。
今回は、「役人町の町家」の設計をした、「住まいの工房」代表・松井薫さんは「京町家には平安時代から、先人が育んできた智恵が詰まっている」と言います。
「たしかに、冬は多少の“すきま風”が入りますが、夏の京町家にはマンションでは味わえない心地よさがあります。京町家は、人の暮らしが自然に調和するようにうまくできているんです」。
京町家を純正なかたちで残したい」という信念のもと、数多くの京町家の再生を手がけてこられた松井さんに「役人町の町家」の設計に込めた思いを伺いました。